工房だより 高橋 明 Akira Takahashi

新作の製作過程や、日常での出来事など、
高橋 明さんがクレモナから近況を
届けてくれています。

2024.03.18 高橋明さんのコラムを掲載いたします!

現在宮地楽器小金井店に、特徴が際立った3台の私のヴァイオリンがそろいましたので、ここでご紹介させていただきたいと思います。
①2022年に製作した、ストラディヴァリ1710“ダンクラ”モデルです。このあとご紹介する“クレモネーゼ”モデルよりも少し小型で、女性にも演奏しやすいモデルです。プレーンな材料を使用しましたので、素直で明るく元気な鳴りが特徴です。演奏していて気持ちよく楽しくなるような作品です。
②2023年の前半に製作した、ストラディヴァリ1715“クレモネーゼ”モデルです。胴体が標準よりほんの少し大きめで、スケールの大きな深い音色です。演奏していて耳にキンキンこない落ち着いた音ですが、ホールの奥まで届く太く柔らかい音色が特徴です。私が理想とする音色に近いと思います。
③2023年の後半に製作した、これもストラディヴァリ1715“クレモネーゼ”モデルです。大きめの胴体による太くしっかりした低音と、蝶杢が入った表板のためにキラキラ輝くような高音が特徴です。材料のいいところをうまく引き出してまとめられたと思います。いろんな楽器のいいところどりできた作品です。
私の作品の中でも特徴が際立った楽器が3台揃うというのも珍しいことですので、ご紹介させていただきました。ぜひ弾き比べて違いを楽しんでいただいて、ご自分に合う音色を選んでいただければと思います。 (高橋明)

2023.10.16 高橋明さんより、モンドムジカの投稿です!

クレモナで恒例のモンドムジカ(クレモナの国際弦楽器見本市)が今年も9月22・23・24日に開催されました。私もALI(イタリア弦楽器製作者協会)のブースにて、最新作のヴァイオリン一台で参加いたしました。
この楽器、できたばっかりですが充実した明るい音が出て気に入っております。
ひょっとしたら宮地楽器小金井店で開催予定の日本人フェア(12月15・16・17日)で皆様に見ていただけるかも?!ぜひ手に取って弾いてみていただきたいですね。 (高橋明)

2023.07.16 「工房だより」高橋明さんの最新投稿です!

コロナ禍以前は毎年秋の弦楽器フェアに合わせて日本に一時帰国していたのですが、今年は数年ぶりとなる春の一時帰国ができ、2つの展示会に参加致させていただきました。まずは、5月2日・3日に大阪市中央公会堂で開催された第13回関西弦楽器製作者協会の展示会です。二つ目は、5月20日・21日に池袋の自由学園明日館講堂で開催された第18回日本バイオリン製作研究会作品展示会です。どちらの展示会も数年ぶりの参加となり、久しぶりにお会いできるお客様も多くて懐かしさでいっぱいでした。これらを糧に、またイタリアでよい楽器作りに精進していきます。 (高橋明)

2023.04.21 クレモナの高橋明さんが間もなく来日されます!!

春の催し物がいろいろ企画されている時期が近づいてきております。5月2日・3日に大阪中之島公会堂で開催される関西弦楽器製作者協会展示会と、5月20日・21日に池袋・自由学園明日館で開催される日本バイオリン製作研究会展示会に参加予定です。詳しくは私のブログまで。また、ゴールデンウィークに向けて宮地楽器に納入予定の新作ヴァイオリンも完成いたしました。久しぶりに蝶杢と呼ばれる模様の入った表板を使用しました。キラキラ輝く模様の美しさ、耳にキンキンこない、穏やかながら芯のある深い音に仕上がりました。宮地楽器小金井店で開催されるヴァイオリンフェアで皆様に見てもらえるかと思います。
https://akiravln.exblog.jp/32943467/
(高橋明)

2023.03.01 クレモナの高橋明さんより、最新投稿です!!

先日、新作ヴァイオリンのf字孔の加工をしました。表板に描いたデザインをもとに下穴を開け、糸のように細い刃の糸鋸を使って切り抜いていきます。表板の木目に足を取られてあっという間に線をはみだしてしまうので、気を遣う作業です。どんな感じのf字孔になるのか、お楽しみです。 (高橋明)

2022.12.31 クレモナよりお越しいただいた高橋明さんより、先日のフェアについて寄稿して頂きました♪

12月2~4日に開催された宮地楽器小金井店のイベント「日本人製作家の饗宴」、大盛況のうちに終わりました。来ていただいた皆様、どうもありがとうございました。丸3年ぶりの日本帰国、そして日本でのイベントだけあり、すごく熱のこもったイベントとなりました。
それは同じく共演した9人の製作者としても、宮地楽器関係者としても同じで、小金井店にクレモナを再現するというコンセプトが実現していました。 (高橋明)

2022.11.01 クレモナの高橋明さんより近況が届きました!!!

宮地楽器小金井店に展示されている私の2021年作のヴァイオリンをご紹介します。楽器製作をしていると、木を削っていて節がでてきたりヤニ壺が出てきたりして、泣く泣く作り直すことがまれにあります。多くは欠陥材料として捨ててしまうのですが、時には音響的にも見た目にも非常に美しく捨てるにはあまりにも惜しいものがあり、今回の楽器はそういう材料をうまく修復して楽器に仕上げてみました。表板には小さい節が貫通しており、節自体は見えないのですが繊維がうねっています。裏板は黒い染みが出てしまったのですが、同じ材料を模様を合わせて埋め込みました。ほとんど見えないくらい修復しましたが、どこが修復した部分かわかりますか?(写真の矢印部分です)。完璧に修復しましたので、ご使用には全く問題はありません。最高の材料なので、非常に美しく、音色も私の理想が再現できたと思います。今までの私の楽器の中では最高傑作のひとつです。ぜひお手にとって試奏してみてください。 (高橋明)

2022.09.11 クレモナより、高橋明さんから近況が届きました!!!

今回は、ヴァイオリンの裏側のネックとの継ぎ目にあるボタン(イタリア語ではノチェッタ)と呼ばれる半円形の部分をご紹介します。あまり目立たず、単純な半円形が飛び出したような部分ですが、私はここもこだわって製作しております。ただの半円形と見えるボタンは、厳密には円ではなく少し上下につぶれた「おまんじゅう」のような形をしております。円の下半分は本体に隠れているため、正確な円形で作ると、下部が本体になだらかにつながって、先がとがったようなおむすび形に見えてしまいます。それをおまんじゅう形にするとより丸く見えて安定し、いわゆる「かわいい」ボタンになります。私は今まで目で見ながら形造っていったのですが、今回きちんとCAD(製図ソフト)を使って、正確に解析してみました。もとにしたヴァイオリンは、私がすごくボタンがかわいいと思っているGiuseppe Ornatiの1929年のヴァイオリンです。解析してみると、確かに直径21ミリの円(図では青色の線)から上下につぶれてまさにおまんじゅうの形をしています。それをもとに今回製作したボタン、うまくおまんじゅう形になっているかな~? (高橋明)

2022.08.01 クレモナの高橋明さんより、近況が届きました!!

7月29日から8月2日までの間に、ハンガリーのブダベストにて国際ヴァイオリン製作コンクールが開催されましたので、クレモナのシメオネ・モラッシさんとステファノ・コニアさんと共にハンガリーに行ってきました。このコンクール、実際のひとつの古いヴァイオリンにそっくりに作るという、かつてない変わったコンクールです。コンクールもいろんな催し物もたくさんあり、美しいブダペストも楽しめました。詳しくは私のブログにて掲載しております。
https://akiravln.exblog.jp/
(高橋明)

2022.06.21 クレモナの高橋明さんより近況をお寄せいただきました。ニス塗りのこだわりについてのお話しです!

今回はニス塗りの作業をご紹介します。私は普段アルコールニスを使っておりますが、どうしても縁の部分やf字孔の中などにニスが垂れて溜まってしまいます。そのため、ニスの色が完成に近づいたら、いったん表板・裏板の縁の部分やf字孔の中、渦巻きの角(面取り)の部分のニスをアルコールで落として、ちょうどいい色になるまで再度塗り直します。f字孔の中は本体より少し暗い色、縁や面取りの部分は本体より少し薄い色になるようにすると美しく仕上がるように思います。この作業、ニスを剥がすのは簡単なのですが、塗り直すのが大変。塗る面積は少ないのですが、同じ作業を始めから繰り返す二度手間です。でも、二度手間でも美しく仕上げるためなのでしょうがないですね。本当はこんなことしなくても一度できれいに仕上げられたらいいのですが・・・。 (高橋明)

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