宮地楽器小金井店弦楽器部門
西村 翔太郎氏
西村 翔太郎
トランペットに明け暮れた少年時代、楽器製作への憧れ、ヴァイオリンとの衝撃的な出会いを経て、高校卒業と同時に日本を飛び出してイタリアへ渡った西村さん。
その情熱と興味の対象は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、さらには古楽器へと、尽きることがありません。
「とにかくヴァイオリンが作りたい!」
西村さんの音楽の原点は、中学のブラスバンドで始めたトランペット。
本気で『トランペットを作ってみたい!』と願うものの、金管楽器は個人的に製作することが困難と知ってがっかりします。

そんな時、偶然テレビで見たダヴィッド・オイストラフのドキュメンタリー番組に影響を受け、ヴァイオリンに興味を持ち始めます。
伝統的な方法で、しかも手作業で製作できることを知り、国内外のヴァイオリン製作家に取材する日々が始まりました。
相談した先の製作家からは、口を揃えてイタリアへの留学を奨められました。
この時期に、地元九州で出会ったヴァイオリニストが所有していたガリンベルティのヴァイオリンに感銘を受け、そのスタイルを目指すようになります。
高校時代にはすでに独学で2本のヴァイオリンを作り上げた西村さん。イタリアへの夢は膨らむばかりでした。


ダヴィッド・オイストラフ ガリンベルティのヴァイオリン



Dario Michielon、Davide Sora
ミラノ、そしてクレモナへ
18歳で単身イタリアへ渡った西村さん。ガリンベルティを筆頭とするミラノ派のスタイルへの憧れから、留学先にクレモナではなくミラノを選びました。
慣れない外国で、また初めての一人暮らしで様々な困難に直面しましたが、そんな時心の支えになったのは、製作学校の仲間たち。
Dario Michielon(ダリオ・ミケロン)さんは製作学校の先輩で、何でも助けてくれる兄貴のような存在。後にクレモナへ移住したあとも、親友として交流が続きます。

ミラノからクレモナへ居を移した西村さん、2006年に開催された世界最大の製作コンクール、クレモナトリエンナーレで、理想的なヴァイオリンを目にします。
ヴァイオリン部門の最高位に輝いた、Davide Sora(ダヴィデ・ソーラ)氏の作品です。
初めて理想のマエストロに出会い、以後ソーラ氏の工房に通いつめてアドバイスをもらうようになります。



世界を舞台に

2008年から少しずつ製作コンクールへの挑戦を始めた西村さん。
2010年にはついにイタリア国内のPisogneコンクールで優勝します。

さらには2013年からは国際コンクールへの挑戦も始め、スロヴァキアの難関コンクール、Violino Arvenzis でも第8位を獲得するなど、確かな手応えを感じ始めています。

Pisogneコンクール表彰式
シンガポールオーケストラ アレクサンドル・スプーテル氏とともに

また、近年は楽器の輸出先をシンガポールにも拡大。
シンガポールオーケストラで20年間コンサートマスターを務め、今年からアーティスティックディレクターに就任した、アレクサンドル・スプーテル氏との写真です。
メインの楽器として、シンガポールオーケストラのコンサートで使われています。

製作日記
クレモナの目抜き通り、ガリバルディ通りに面した古い建物の一角に、西村さんの工房はあります。
実は、最近工房を引越したばかり。
毎日階段で3階まで昇り降りするのは大変ですが、工房の入口からはクレモナのシンボル、トラッツォを望むことができます。
工房から望むトラッツォ
振動特性を調べる装置

工房には、なにやら電子機器に繋がれたヴァイオリンが。
これは完成した楽器の振動特性を調べる装置で、オールドの名器の振動特性と、自身の新作を比較することで様々なデータを得ることができます。
伝統的な製作法と、最新のテクノロジーの融合です。

 決して広くはない工房ですが、作業台を目一杯使って、西村さん得意のチェロを製作している光景をご紹介しましょう。
チェロ製作過程(横板貼り付け)
写真は、製作の第一段階、設計した型に合わせて横板を曲げて貼り付け、アウトラインが確定したところです。
楽器の横板は、薄くカンナがけした楓材を水で湿らせて、専用のアイロンを使って曲げていきます。杢が美しい材料ほど割れやすく、注意が必要です。
しかもチェロの横板はヴァイオリンの数倍の面積ですから、この作業だけで大変なエネルギーです。
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その後表板、裏板に完成したアウトラインを写しとり、切り抜いていきます。
ノミでおおまかなアーチを削り出した後、豆カンナで楽器の表面を整えていく作業はヴァイオリンと同じ手順です。
しかし、ヴァイオリンの数倍の面積を持つチェロの表板、裏板を滑らかに削り出していく作業は、気の遠くなるような道のりです。

チェロ製作過程(削り出し)

チェロ製作過程(ニス乾燥・補修)
ニス塗りも、チェロならではの工夫が必要です。
大きなボディにムラなく均等にニスを塗るために、楽器を保持するための専用スタンドなどを作る製作家もいるほど。
写真は、美しく塗り上がったニスを乾燥させ、補修しているところ。

ヴァイオリン製作が平均して2ヶ月を要するところ、チェロはその2倍以上の時間が必要です。
こうして時間をかけて生み出されたチェロは、その後何十年も、いや、何百年も歌い続けるのです。

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それが終わると、いよいよ完成している横板に表板、裏板を貼り付けます。
やはりヴァイオリンに比べて大きなチェロは、このシーンだけで十分な迫力です。いよいよ楽器らしくなってくる瞬間です。

チェロ製作過程(箱閉じ)



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