宮地楽器小金井店弦楽器部門
百瀬 裕明氏
百瀬 裕明
クレモナで活躍する日本人製作家が数十人におよぶ中、
丁寧なウッドワークと、製作仲間との研究で作り出したオイルニス、
そして音色の美しさで注目を集めている百瀬さん。

国際製作コンクールへの挑戦、製作への想いなどをご紹介します。

ヴァイオリンとの出会いは・・・

百瀬さんがヴァイオリンと出会ったのは、実は宮地楽器のショールーム。
家族がヴァイオリンを習い始めるときに楽器を購入することになり、楽器選びを家族みんなで手伝うために同行したのがきっかけです。
多くのものが機械で生産できるこの時代に、伝統的な手法で手作りされた楽器がより高い評価を受けていることに関心を持ち、製作家によって音や外観もまるで違う個性を持っていることに驚きました。

自身もヴァイオリンのレッスンを始めた百瀬さん。次第にヴァイオリンの魅力にとりつかれ、製作教室にも通い始めます。しかし1本目のヴァイオリンを作り終える頃、本気でやるなら本場へ渡ろう、とクレモナへの留学を決意。
30歳という年齢を考えると、チャンスは今しかない、と覚悟を決めたそうです。
家族が宮地楽器で購入したものと同モデルのヴァイオリン



マエストロ、製作仲間と
クレモナの製作学校での日々
留学した当初、最も苦労したのは言葉。日本である程度勉強していったものの、現地ではほとんど通用しなかったそうです。
製作の実習ではマエストロの手さばきである程度のことは理解できますが、本当にマエストロが言いたいことは、やはり言葉を正確に理解できないとしっかり学びとるのが難しいのです。

クラスの中でも決して若いとは言えない年齢でしたが、様々な国からの留学生との学びの日々は、百瀬さんにイタリアで生きていくうえでのエネルギーを与えてくれました。



ミッテンヴァルトコンクールへの挑戦

百瀬さんが初めて国際コンクールにチャレンジしたのは2010年。
ドイツのミッテンヴァルト国際弦楽器製作コンクールでした。先輩製作家の菊田さん、高橋さんとともに出場しました。

ヴァイオリン部門に出品し、結果は第9位。
大規模な国際コンクールで評価を得て、手応えを感じます。

ミッテンヴァルトコンクールにて
ミッテンヴァルトにて高橋明氏と

ミッテンヴァルトの豊かな自然は、コンクールで緊張した心にいっときの安らぎを与えてくれました。百瀬さんも、『こんな街で製作できたら!』と思ったそうです。

初めて挑戦したこのミッテンヴァルトコンクールで、いつもとは違う視点から自分の作品を評価してもらうことの意義を感じ、また世界各国から集まった楽器に多くの刺激を受けた百瀬さん。 この貴重な経験を糧に、この後他のコンクールにも積極的に取り組んでいくことになります。

製作日記
ヴァイオリン作りは材料選びから。
材料選びはいつだって真剣勝負です。
しかし、まだ見ぬ新しいヴァイオリンへの期待が膨らむ瞬間でもあり、製作家にとっては至福の時間でもあります。
写真は、コンクールで訪れたミッテンヴァルトの街で、空いた時間に仲間と一緒に材料を選んでいるところです。
材木を選ぶ百瀬さん、菊田さん、高橋さん
 クレモナの中心地からほど近いアパートの一角に、百瀬さんの工房はあります。
 ここでは、弦楽器フェアに出品する予定の楽器の製作シーンを少しご紹介しましょう。
製作過程
ヴァイオリンの表板、裏板とも、アーチと呼ばれる外側の膨らみを完璧に仕上げてから、内側をノミで丁寧に削って厚みを調整していきます。
最終的には1mm以下の世界での調整になりますが、材料自体が個性を持つヴァイオリンの世界においては、最後は職人としての経験と感性が決め手となります。

一つ一つの工程にじっくり時間をかけるのが百瀬さんの流儀。
年間の製作本数は、わずか6本。
1本のヴァイオリンへの想い入れが感じ取れます。



とにかく、ご購入いただいたお客様に気分良く弾いてほしいと願う百瀬さん。
「毎日練習するのに、弾いていて楽しくなければケースを開けなくなってしまいますから。」
極端な話、100人に褒められるよりも、選んでいただいた一人のユーザーに心から気に入ってもらえたならそれが一番うれしい、とのこと。

また、楽器と呼ぶからには音は最も重要。しかし、音が良ければ外観はそこそこでいい、という考えは絶対にない、とも。
製作者仲間と研究してきたオイルニスは、柔らかな音を生み出すための工夫。加えて、楽器の外観の表情付けなども、効果的にできると感じているそうです。

将来の夢は、という問いかけに、『自分の作りたい音色を自由自在にコントロールできる製作者、木を理解してその魅力を十分に引き出せる製作者』 と答える百瀬さん。
クレモナへ渡ってもうすぐ10年、理想のヴァイオリンを追い求める旅は続きます。

研究を重ねてきたニス



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